法律解説

フリーランス保護新法で変わる業務委託契約書の必須記載事項【2026年版】

2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)により、フリーランスへの業務委託に関するルールが大きく変わりました。企業側には書面交付義務や禁止行為の規制が課され、既存の契約書の見直しが急務となっています。

1. フリーランス保護新法とは

フリーランス保護新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は2024年11月1日に施行されました。フリーランスとして働く個人事業主を保護することを目的とし、企業がフリーランスに業務を委託する際の取引ルールを定めています。

法律の適用対象は「特定業務委託事業者」(従業員を使用する企業・個人事業主)から「特定受託事業者」(業務委託を受けるフリーランス=従業員を使用しない個人事業主)への委託取引です。

これまでフリーランスへの発注は下請法が適用されないケースも多く、報酬の不当な減額や支払遅延などのトラブルが多発していました。同法はこうした課題を解消するため、書面交付・禁止行為・ハラスメント対策などを法的義務として明確に定めました。

2. 書面交付義務:契約書に必ず記載すべき8項目

企業がフリーランスに業務を委託する際、取引開始前に以下の8項目を書面(または電子データ)で交付することが義務付けられました。口頭での合意だけでは法律違反となります。

  • 業務の内容:具体的な作業内容・成果物を明記する。「その他業務全般」のような曖昧な記載は不十分
  • 報酬の額:金額を明確に記載する。時間単価・成果報酬など算定方法も含む
  • 支払期日:給付受領日から60日以内の具体的な日付を記載する
  • 業務委託事業者の名称・住所:発注者の正式な法人名・所在地
  • 特定受託事業者の名称:受注者(フリーランス)の氏名・屋号
  • 業務委託をした日:契約締結日または発注日
  • 給付を受領する日(役務の提供を受ける期日):納品日・完了予定日
  • 給付を受領する場所:納品先・役務提供場所

書面交付は紙の契約書に限らず、電子メールやクラウドサービスでの送付も認められています。ただし、フリーランスが閲覧・保存できる形式である必要があります。

3. 報酬支払期日の制限(60日以内ルール)

フリーランス保護新法では、成果物の給付を受けた日(または役務の提供を受けた日)から起算して60日以内に報酬を支払うことが義務付けられました。

これは下請法における支払期日(60日以内)と同水準の規制であり、フリーランスへの発注においても同様の保護を提供するものです。

  • 60日を超える支払期日の設定は禁止
  • 月末締め翌々月払い(約60日)は問題ないが、翌々月末払い(約90日)は違反となりうる
  • 支払期日を契約書に明記しない場合、給付受領日が支払期日とみなされる

既存の契約書で「翌々月末払い」などの長期支払条件を定めている場合は、早急に見直しが必要です。

4. 禁止行為7類型

フリーランスへの業務委託において、以下の7類型の行為が禁止されました。継続的業務委託(1ヶ月以上の委託)の場合に適用されます。

  1. 受領拒否:正当な理由なく成果物の受け取りを拒否すること
  2. 報酬減額:あらかじめ定めた報酬を一方的に減額すること
  3. 返品:正当な理由なく受領した成果物を返品すること
  4. 買いたたき:通常の報酬より著しく低い報酬を不当に定めること
  5. 購入・利用強制:自社の商品・サービスの購入や利用を強要すること
  6. 不当な経済上の利益の提供要請:金銭・労務などの提供を不当に要請すること
  7. 不当な給付内容の変更・やり直しの要請:正当な理由なく成果物の変更やリテイクを要求すること

特に「買いたたき」と「不当な給付内容の変更」は、従来から業界慣行として行われていたケースも多く、注意が必要です。

5. 育児介護への配慮義務

継続的業務委託(6ヶ月以上)の場合、発注企業はフリーランスから育児・介護に関する申出があった際に、業務委託の条件変更について配慮する義務が生じます。

具体的には、納期の延長・業務量の調整・作業方法の変更などについて、フリーランスからの申し出に誠実に対応することが求められます。ただし、必ずしも申し出通りに条件変更する義務まではなく、「配慮」が求められる規定です。

また、発注企業にはハラスメント対策措置を講じる義務も課されました。フリーランスへのセクハラ・パワハラについて相談窓口の設置などの対応が必要です。

6. 違反した場合のペナルティ

フリーランス保護新法に違反した場合、以下のペナルティが定められています。

  • 行政指導・勧告:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が指導・勧告を行う
  • 公表:勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性がある
  • 罰則:書面交付義務違反などの場合、50万円以下の罰金が科される場合がある
  • 民事上の損害賠償:禁止行為によってフリーランスに損害が生じた場合、損害賠償請求の対象となる

罰則金額は高くないものの、企業名公表による信用毀損リスクや民事上のトラブルを考えると、コンプライアンス対応は不可欠です。

7. 既存契約書の見直しチェックリスト

フリーランスとの既存の業務委託契約書について、以下の項目を確認しましょう。

  • 業務内容・成果物が具体的に記載されているか
  • 報酬額が明確に記載されているか
  • 支払期日が給付受領日から60日以内に設定されているか
  • 発注者・受注者の正式名称・住所が記載されているか
  • 納品日・完了予定日が記載されているか
  • 報酬の一方的な減額に関する条項がないか
  • 無制限のリテイク・変更要求条項がないか
  • 購入・利用強制に該当する条項がないか

AIで業務委託契約書のリスクを自動チェック

ContractCheck AIは、業務委託契約書のリスク箇所をAIが自動で検出します。フリーランス保護新法への対応状況も含め、PDFをアップロードするだけで問題箇所を「高・中・低」で分類し、改善提案を提示します。3回まで無料でお試しいただけます。

無料で契約書をチェックする